「虎鉄が想像してるようなことはもう起こらないから!」
「もう?」
「そうよ! もう二度……っと、」
沈黙、からの沈黙。
「違うから。ほんと、虎鉄の気のせいだから」
思いっきり目を逸らして言うことか。
そんなことで、校医と過去なんかあったんだな。っていう俺の察しを気のせいで済ませられると思ってんだいか。
「校医食ったとかやばくないっすか」
「食われた側に決まってるでしょ!?」
勢いよく顔を上げたバンビ先輩はまたハッとして、項垂れる。諦めたっぽいな。
「先輩の元カレが校医とかエロいんすよ」
「元カレじゃない! 付き合った覚えはこれっぽちもない! 黒歴史! 抹消!」
とりあえず全力で否定してっけど今、黒歴史って言ったよな。つまりマジで付き合ってた? そうじゃなくても食われた経験はあると。マジかよ。昔は好きだったとか? あの鼻につく野郎を? 趣味わるっ。
「保健室入ったときも棒読みで笑ってましたけど、なんかあったんすか」
「……虎鉄あんた、学校に女友達いないの?」
「いるように見えるんすか」
「だよね……いや、いるじゃん。きゅうちゃんが」
「あいつはバクと同じ腐れ縁ですって」
「あー……」
なんだよ歯切れわりぃな。
女のきゅうに訊けば分かんのか? バンビ先輩と校医に過去何があったんだ?って? 本人目の前にしてんのに、なしてそんな回りくどいことしなきゃいけねえのや。
「何があったんすか?」
じれったくなり再び尋ねると、目を逸らされた。
「ていうか、虎鉄は話したいと思う? 元カノのこと」



