「男とは距離置きたいって言ってた割に、ずいぶん人目につく場所にいるんだな」
「あー……日常的なことは仕方ないっつーか。告白は単に別れたばっかだから断ってるだけだべ。あれも友達だろ」
足を止めることなくテラスを尻目に階段を下りると、
「きゅう。さっきバンビ先輩に駆け寄ったの誰や」
バクの問いに、きゅうがタブレットを見せてきた。
「深山(みやま)先輩だな。通称ミヤテン。バンビ先輩とは1年のときに委員会が一緒で仲良くなって、進級してからはクラスメイトとして親しくしてる、めずらしくもクソ羨ましいバンビ先輩の男友達だ」
さすがよく交遊関係まで調べ上げてんな……。
きゅうのタブレットには、バンビ先輩に三井先輩、深山先輩など数人が笑顔でピースをする写真が表示されていた。
「仲良さそうだな。つーか先輩に男友達いるのが意外」
「そりゃあ、ひとりくらい下心ねえ男もいんべ。バンビ先輩だって自分は可愛いと自覚してる系女子なんだし? お互い恋愛対象じゃないって分かれば、普通に仲良くやれるって感じでねえの」
ふーん、とバクに気のない返事をしておきながら、テラスの様子や集合写真を思い返す自分がいた。
……下心がねえ男なんて存在すんのか。
そうじゃなきゃ親しくなれねえなら、バンビ先輩はどうやって彼氏ってもんを作ったのや。って話になんね?
その辺は自分で検証してみるからいいとして、昨日の今日だし、また警戒されるようになってたら面倒くせえな。



