だと言うのに、三井先輩は『貸して』と俺の携帯でバンビ先輩をしれっと盗撮するんだからビビッた。
しかもまさかの7連写。三井先輩は『事情はうちが話しといてあげる』と部活へ戻り、バンビ先輩は下校時刻になったら逃げるように帰ってしまった。
「……自分で話しゃ良かったかも」
「なんだよトラ。ミーア先輩のこと疑ってんのわ? 大丈夫だってー」
「三井先輩を疑ってるわけじゃなくてよ」
ちらりと見た先には、顔溶けるんじゃねえのかってくらい鼻の下を伸ばしているきゅう。
俺は慣れているから気に留めなかったけど、こいつが写真を欲しがっていた奴だとバンビ先輩に知れたら――…。
「こんなのとつるんでるって思われたくねえ……」
顔を引きつらせて言うとバクが吹き出した。そして身を乗り出し、意味ありげな笑顔を浮かべる。
「なあトラ。きゅうの土下座は別の機会に取っとけな?」
「……てめぇ、マジで余計なことだけはすんじゃねえぞ」
そう睨んでも、バクは『分かった』とも『嫌だ』とも言わなかった。
「あれバンビ先輩とミーア先輩じゃね?」
家庭科室から教室へ戻る道すがら見掛けたのは、2階のテラスで立ち話する先輩たちだった。
「2、3年はテラスが隣接してていいよなー」
バクの目線の先には、3階のテラスで野球じみた遊びをする男子たちの姿もある。数名は下に居るバンビ先輩を盗み見ているようだが。



