「きゅう。せっかくバンビ先輩の写真が手に入ったんだから、他にすることがあるんじゃねーの?」
「ぶっはああああ! そうだったそうだったぁ! あー早く家に帰りたい! その前にまずマイタブレットちゃんに写真を転送してぇ~っ」
ぐふふと笑うきゅうにドン引きしながらも、そう仕向けた本人を横目で睨む。
「バクてめぇ……」
「まあまあ。確かに昨日のトラは災難だったけど、ミーア先輩が助けてくれたんだからいいべや」
にやにやと笑うバクがろくでもないことを考えていることくらい、察しがつく。
だが回避する術を持っていない俺は溜め息をつき、「むはぁ」と鼻息荒く興奮しているきゅうに目を覆った。
こいつらがいると、バンビ先輩に近付けねぇ気がしてきた。
――昨日、俺に蹴りを食らわせて走り去ったバンビ先輩。
30分ほど経った頃か。三井先輩に連れられて渋々中庭へ戻ってきたのだが、完全に俺とバクと距離を取って、ひとりで黙々と草むしりをしていた。
その様子を見た三井先輩が呆れたように事情を聞きにきてくれたのは助かったけど、バンビ先輩は写真が好きじゃなかったらしい。
とくに男に撮られることが嫌だとか。
まあ理由は過去2回の捨て台詞から想像できる。
可愛いってのは、得することばっかじゃねえんだろうな。