「俺ん中で先輩はエロ可愛いとしか言いようがない。それってダメなんすか?」


真面目な顔して言うセリフじゃないことは確かです。


だから、普段なら『ダメじゃないけど恥ずかしいからやめて?』くらいは言えるのに、どうしてか言葉が出てこない。


むしろ顔が熱くなってきた気がして、慌てて顔を背け、虎鉄の横を突っ切ることにした。


「もうこの話終わり! 清掃しなきゃレポート書けないんだからっ」

「あ。待って先輩」


唐突に手首を掴まれ反射的に振り返る。虎鉄は俯いて自分のポケットをまさぐっていた。


な、何? 一体何を取り出す気!? まさか、まさか……っ。


「先輩の写真、撮っていーっすか」


予想通り携帯を取り出した虎鉄にサァ……ッと血の気が引く。脳裏に浮かんだのは数々の嫌な思い出プラスだらしない表情アンド下心丸見えの男たち、エトセトラ。


「なん……っ、写、写真……?」

「できれば全身と顔のアップ撮らせてほしーんすけど」

「最っっ低! 何に使う気!?」

「は? 何って、」


私は力任せに腕を振り払い、


「エロ本でも見てろこのド変態!!」


と、虎鉄の脛に渾身の蹴りを入れて逃げ出した。


バカだった! 一瞬でもそんなに悪い奴じゃないかもって思った私がバカだった!


「うわぁあああミィアァアア!!!!」


部活中のミーアへ助けを求めることにした私の背後では、バクの大笑いが響いていた。


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