「俺がなんすか」
虎鉄は痛がるバクを無視して訊いてくる。
そんな大した疑問じゃなかったんですけど……。
「ええっと」
「虎鉄でいーっすよ」
「こ、虎鉄って、それと仲良いの?」
「それってなんすかそれって! バクっすよ! なんなら俺のこともコースケって、」
「べつに仲良くないっす」
「おい遮るとか嫌がらせだろ」
「幼なじみっつーか、これとはただの腐れ縁で」
「これ呼ばわりかよ! トラおめぇ、俺を追っ払ったんだから、ちゃんと仕事したんだろーな!?」
「ああ? てめぇの尻拭いなんか死んでもやるか」
ピシャーン!という音が聞こえそうなほど、トラvsバクみたいな空気になっている。
特別仲がいいって感じでも、気が合うってわけでもなさそうなのに、ぽんぽん会話できてるから不思議だったけど、幼なじみって聞いて納得。
きっと昔っからバクは鬱陶しくて、虎鉄は手を焼かされたんだと予想。
「トラおめぇ、ちょ~っとバンビ先輩と仲良くなれたからって、浮かれてんだべ」
「ひがみうぜえ」
この短い返答がいかにも慣れてるって感じで、ふふっ、とつい笑ってしまう。
ハッとしたときにはもう、ふたりは口喧嘩をやめて私に視線を注いでいた。