「バクは俺の10倍くらいしつこいっすよ」
「聞けばいいんでしょ聞けばあ!」
ぐわっと勢いよく顔を上げる。蕪早虎鉄は見開いた目をすぐに細めた。
「となり、いーっすか」
「え!? 嫌! だけ、ど……勝手にしてよ……」
はあ、と溜め息をついた私は、バクが相手になるよりかは幾分マシだと諦めた。
警戒心はまだ持っているけど、それを察している風な蕪早虎鉄は自分で言う通り、やさしーほうなのかも。
「巻き込んですんません」
「……」
バクからは聞かされる気配すらない言葉に左隣を見る。
蕪早虎鉄はヤンキー座りをしながら膝に頬杖をつき、足元を見ていた。
「俺ら、しょっちゅう揉めごと起こしてるからゴーレムに目ぇ付けられてて。ゴーレム、学年主任で生活指導だからそういうことにすげえ敏感なんすよ」
それ、自分で問題児って認めたようなものじゃ……。
「だから飛び火っつーか、先輩は悪くねぇって話はしたんすけど。バクがあんなだし、俺が先に手ぇ出した理由も理由だしで」
「えっ……殴った理由話したの?」
「いや、それはさすがに」
先輩の面子に関わるんで。と蕪早虎鉄は苦笑する。
「バクが先輩にしつこく詰め寄ってるのが鬱陶しくて、つい。ってことに」
ああ……だから、ふたりが私に言い寄ってるってことになっちゃったのね。



