思考と表情が結びつかない私は、作り笑顔で「待ってます」と答えていた。


そして頬を染めた彼は元気よく「はい!」と返事をして去って行く。


果たして交際を申し込まれたわけでもなしに、校舎裏まで来る必要があったのか。


ないよね、色んな意味で。



「……あ」


尾行するのはやめてくださいって言うの、忘れた。


はあ、と地面に落ちた溜め息をなかったことにするように、ぐっと空を仰ぐ。


見上げた先に生首――。


「いたっ! 楓鹿(ふうか)~!」


――ではなく、2階の窓から顔を出したミーアだった。


私が呼び出されたことはクラスメイト全員周知の上だけど、校舎裏だと推理できるあたり、さすが親友。


「お疲れのところ悪いんだけどさぁ、紅茶とキャラメル味のかりんとう買ってきてくれるーっ?」


悪いと思うなら頼まないでほしい。

共感もので励まされると傷をえぐられるからやめてほしいって言ってもやめてくれないだけある。


「落とすよー!」

「え!? 待っ……!」


ミーアは掲げたお札から手を離し、「よろしくー」と言って窓の奥へ引っ込んだ。


人使い粗いな!