「くたばれ痴漢野郎は予想外だった」


ふ、と思い出し笑いをすれば「あー、アレな」とバクもつられて笑った。


「バンビ先輩って痴漢を3回撃退したことあるらしいぞ」

「へー。気ぃ弱そうに見えっけど、はっきり物言えんだな」

「実は気ぃ強いってギャップ、トラの好みド真ん中だべ」

「すでに落ちかけてるわ」

「ぎゃっは! マジかよ! あれは脈ねぇべ~。見るからにヤンキー嫌いっぽいし」

「俺らヤンキーじゃなくね」

「同意半分、否定半分。俺ら生活態度やばすぎて推薦なんかもらえず、一般入試も受かるかひやひやもんだった」


そういえばそうだったなと思い出す。


もはや過去だが。受かっちまえばこっちのもんだが。


「俺らの地元はなしてあんなに柄が悪いかねー」

「知らね。地域色でねえの」


さすがに全員似たり寄ったりとは言わねえけど。

いくら物心ついたときから周囲の柄が悪かったとはいえ、もろに影響される奴が多過ぎる。


俺の場合は兄貴が元ヤンで親父まで元族のせいで、年に何回か走り屋の先輩に誘われる。


弟としても息子としても断れなくて面倒だけど、兄貴や親父が連れてくる仲間ってもんが嫌いなわけじゃない。情に厚いし面倒見もいいし、憧れる部分もないわけじゃねえし。


育った環境を抜きにしても、この髪色に切り傷に目付きの悪さじゃヤンキーと判断されても仕方ねえんだと思う。不服だけど。