「もうやだ……学校コワイ……」
「先輩、愛されてるんすね」
ひらひらと破った処分通知を揺らす虎鉄は突然そんなことを言う。私はおちょくられてるとしか思えないのに。
「私はもっと優しく愛されたいっ」
「その役目は俺だけってことっすよ」
不覚にもときめいて、差し出された処分通知の端切れを黙って受け取ってしまう。
いらないんだけど……これもまた、思い出の1ページ?
「騙されない! こんな愛された思い出は欲しくない!」
将来への不利になりかねない! 家に帰ったらシュレッダーにかけよう。いやそれじゃ生ぬるい。庭で燃やそう!
「そのうち笑い話になりますって」
眉根を寄せる私は、処分延期など取るに足りない様子の虎鉄が気に入らない。ふてぶてしいというか。大胆不敵な虎鉄といると、私が気にしていることなんて瑣末なもののように思えてくるのが気に入らない。
ぐに、と頬をつまんできた虎鉄は、私が言いたいことを分かっているのか否か。
お互い不満の眼差しをぶつけあい、やがて虎鉄は「先輩ほんと、素直じゃないっすね」と口角を上げた。
たしかに許したくない気持ちはあるのに、頬を膨らませる私のそれは、大した怒りじゃなくなっている。
「……きゅうちゃんを応援したのはやり過ぎたかなって、反省してなくもない」
くっと虎鉄が笑ったのは、自分と同じような謝罪を返されたからかもしれない。
いくら頑丈でも、何度も頭突きを見舞われては痛かったはずなのに。虎鉄はつまんでいた私の頬を親指で撫でてくるから、拗ねた表情はやめてあげた。



