「ね、昔の写真とかないの? 中学の卒業アルバムとか」
「……あるけど、どこにしまったか分かんないっす」
「えー。探してよ。見たい」
「次までには探しとくんで」
「今見たかったのに」
口を尖らすバンビ先輩の目線はテレビに向けられる。
休日の午後6時前の番組はどれも興味がそそられない。繋ぎで天気予報が流れ、雨だとか、雨の日はだるいとか、梅雨入りはいつだろうという、どうでもいい話をした。
MCとゲストが全国各地の有名食材を取材し食す番組に変わり、腹減ったなと思ったとき、
「なんか変な感じ、……しない?」
バンビ先輩が視線をよこした。
「そーっすか?」
と言いながら俺も薄々感じていた。
ふたりきりなんて今に始まったことじゃねえのは確かだが、それは校内での話であって、そこかしこに生徒の姿や声があった。
つまりこの状況はおよそ初めてとも言える、誰の目も気にしなくていい密室にふたりきりというわけだ。
……で? そんなことを再確認させられた俺はどうすりゃいいのや。口先だけじゃねえとバンビ先輩の家の前で証明したあの夜より、はるかに好条件がそろっていることまで分かり切ってるんですが。
「なして変な感じすんのわ?」
「いつもバクとかミーアがいたから? 静かだなー……って。虎鉄の部屋でふたりきりって変な感じするじゃん」
「ああ……言われてみればそーっすね」
だからなんだっつー話になるけどな。付き合ったんだからべつにおかしくねーべ、で終わるけどな。



