「お望み通り可愛く認めたんだから、ときめきなさいよ!」
「演技だと分かってんのにときめくかよ……。つーか赤くなって怒るほうが可愛いっす」
「……っまあね!」
何うろたえてんのや。付き合えばもっと素直になるやも知らんと思ったが、そうでもねえな。
「……何よ」
「いや。俺の頑張りに比べたら先輩の告白って、あんこの入ってないパンみたいなもんだったなと」
「人の告白をあんぱんに例えるとか!! 告白するのにどれだけ勇気がいると思ってるのよっ」
「告白してくれオーラ発しまくりでしたもんね」
「助けないで告白させようとした虎鉄にだけは言われたくない!」
肩を殴られそうになってひょいと避けたら脛を蹴られた。
クソ、意外に暴力的だな。俺がイテェなって笑って受け流すどころか、反撃してじゃれあうような男だと思うなよ。
「あがるすか?」
空の駐車場にスクーターを止め、踵を返すとバンビ先輩が象牙色の外壁に紺色の屋根の一軒家を見上げていた。
「え、いいの?」
「言っとくけど男所帯だから汚いっすよ」
3段しかない階段を上り、開けた墨色の門扉がキィと音を立てる。左手の駐車場には親父の車も兄貴のバイクもない。右手の庭は手入れされていないから雑草だらけ。
ポストから郵便物を取り出し玄関を開けると、少し遅れてバンビ先輩が入ってきた。



