オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-


「そういや李堵先輩が廊下に出てきたとき、『楓鹿と近々付き合う奴ってまさかあの銀髪?』って訊かれたから、『週明けには付き合ってると思いますけど喧嘩しまくると思うんで、付け入り放題ガンバです! てへぺろっ』って言っといてやったからな」


ガッとバクの胸倉を掴んだのは昔ながらの反射だった。


「やだこわーい。暴力はんたーい」

「てめぇはなしてそう余計なことしかできねえのや……」

「トラお前、誰を彼女にしたか分かってねえなぁ。元カレだけでも曲者揃いのバンビ先輩だぞ? 平和にイチャこらできればいいけど、浮かれて足掬われなきゃいいなあ?」


俺が振るった拳を俊敏に避けたバクはけたけた笑って逃げていく。この外道面が。


「虎鉄ー」


どうしてやろうかと考えていると、バンビ先輩が鞄を持ち直して歩み寄ってくる。その背後では深山先輩と三井先輩が「おつかれー」と帰っていくところだった。


「ほんじゃ、俺らもお先~っ。行くぞきゅう」

「バンビ先輩お疲れっした!」

「またねー」


奇跡起きたぞオイ。バクに引きずられながらではあるが、きゅうが大した文句も暴力もないまま帰るとは……。


いや、あの目は月曜日にブッ飛ばすと決めてんな。と思っていたら、ふいに左手が握られた。


「帰ろ?」

「……ああ、はい」


ふたりきりになった途端に手を繋いでくるとか。身長差があるとはいえ、上目で微笑んでくるとか自分の可愛さ活用し過ぎだろ。


外じゃなきゃ押し倒すところだが、あいにく帰宅途中なのでバス停に向かった。