「ぶはっ、ははは! 告白すら上から目線ってアホかっ」
「アホ!?」
バンビ先輩らしいっちゃらしいか。しおらしく好きだの付き合ってだの、言うわけねえよなぁ。
くつくつ笑っていると、バンビ先輩は口を尖らせ、恐らく俺の返事を待っている。自分以外ありえないと言っておいて、そういうところはいじらしいと思う。
「よくできました」
褒めたのに、頬を膨らます意味。
何様だと言いたいのか。それとも足りないと言いたいのか。どっちだっていいけどよ。
「こんな距離じゃ褒めるもんも褒められないっす」
「ほんっと腹立つ……! 虎鉄なんかバカだし生意気だしエロ魔人だし暴力的だし口悪いしヤンキーかぶれだし少しも私のタイプと合ってないっ」
喧嘩売ってるとしか思えないことをぐちぐち言いながら、バンビ先輩は外に立つ俺に歩み寄ってくる。
「でも好き」
そう言って抱きついてくるから、心拍数が跳ね上がった。
この人の不意に出る絶妙な可愛さはなんなんだ。
ぎゅってすんな。不意打ちにうっかり赤面しそうだわ。
ああ、クソ。どうすっかや。今日の雑用が終わったら話をしようと思っていたから、この状況は完全に想定外だ。
悶々とこのあとのことを考えていると、わずかに離れたバンビ先輩が目と鼻の先にいた。
まあ……あとのことなんか、今はどうでもいい。
俺の頬に掛かる焦げ茶色の髪を掻き上げるようにして、バンビ先輩の顔を引き寄せた。
触れた唇がやけに甘く感じたのは、数日前よりもずっと明確に、互いの気持ちの在り処を知ったからかもしれない。



