「私のこと散々守るって言ったのはどこの誰よ!」
「未然に防ぐ努力はしますけど。防げなかったことに対してまで責任取れって? どんだけ姫気取りなのや」
「……っそうじゃなくて、」
「ボディガード気取ってたわけじゃねえんすよ、俺は」
私を見つめる虎鉄の瞳は険を纏っていた。目付きが悪いのはいつものことなのに、怒っていると思った。
……当然じゃん。傷付かないでよ、私。
機嫌は直ってなくても、嫌われたわけじゃない、って。仲直りっぽいことをしたんだから、攻め時はいくらでもある、って。
そんなの全部、虎鉄が辛抱強く投げ出さないでいてくれるからでしょ。私が虎鉄に、おんぶに抱っこだったからじゃん。それなのに助けなさいよって、ほんと、姫気取りもいいところだ。
でも、虎鉄がそうさせるんだよ。
私はプライドばっかり高くて、素直じゃなくて怒らせて、ついに『可愛くねえ』って言われたけど。
虎鉄は見届けるって、今も離れずにいてくれるから。
こんな私でもいいんだって、思わせてくれるから。
嘘みたいなのに、あとは飛び込むだけだって思ってしまう。
……不安がないって、すごい。きっと、いつも嘘偽りないまっすぐな虎鉄だから、疑いようがないんだ。
悔しいなあ……これって絶対、虎鉄の思うつぼだよ。
だけどもう、1秒でも早くあの腕に抱きしめられたい。
「邪魔すんなよ、1年」
押し黙っていた私は、李堵先輩の声に顔を上げた。
虎鉄は待ちくたびれただろうけど、伝えるから。
そのあとはもっとずっと、そばにいて。



