軽い衝撃を受けた背中。がっちり掴まれた右手首。覆い被さるようにして私を見つめる、李堵先輩。


イケメン・金持ち・軟派男の名を欲しいままにする元カレに壁ドンされた、私。


ぷつ、ぷつぷつ……と浮かび始めるのはもちろん、鳥肌。


「ありえない!!!」


ゾッとする!
こんなにときめかないとは思わなくて逆にゾッとした!


「少し黙って」

「嫌です! 黙ってもいいことは起こりませんからっ」

「自分の今の状況分かってんの?」

「もちろんですよ! 李堵先輩は壁ドンするキャラですよね! 分かってました誰もが把握してました! でも私は李堵先輩に壁ドンされるとかウォエッ!! 気持ち悪いこの状況に吐きそうっ!」

「……楓鹿そんな激しいキャラだった?」

「李堵先輩に振りまく愛想はとっくの昔に枯渇しちゃってて。どうもすいません」

「それなら問題ねえわ。逃げられると燃える性質だって気付いたから」

「さりげないモテ自慢ごちそうさまですぅ~……」

「それで昔は嫉妬してたもんな」

「遥か昔はね! ……って、ちょっと!?」


両足の中心に李堵先輩の膝が入り込んできて、先程よりもずっと体が密着してしまう。


慌てて空いた手で肩を押し返すも、びくともしない。


「ほんとに無理だってば!」

「どうだか」


ほとんどの女子が見惚れてしまう美貌が、間近で微笑みを浮かべる。