オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-


私に近付く李堵先輩へ噛み付くきゅうちゃんを虎鉄が取り押さえたり。バクが私の背中を押してくるから李堵先輩との距離が縮まって悲鳴を上げたり。手が空いているのに呑気に笑うミヤテンを虎鉄が怒ったり。


ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる6人が入り乱れる中、止まらず逃げれば良かったと後悔する。


今からでも遅くない。


私のために戦ってくれるみんなを置いて行くのは心苦しいけど、私がいなければ事態は終息するんだから。


ごめんね、みんな……ってほど味方いないけど! 許して……!


「きゃっ!」


悲劇のヒロインを演じて駆け出したら誰かにぶつかり、この場に相応しい声が出た。


「ごめんなさ……ヒィッ!」


視界に飛び込んできた赤いバラに悲鳴を上げる。恐る恐る顔を上げれば、床に落ちた赤いバラを拾い上げ、差し出してくる校医の越白先生がいた。


「やあ楓鹿。今日もとびきり可愛いね」

「次から次へとなんなの!?」

「僕は花瓶の水を替えようと思って」

「そういうことじゃない! あとバラはいりません!」


もうダメだ! 越白先生まで出てきたら、いよいよ収拾がつかなくなる! 他に逃げ道は……っ。


「ぬさら、何してんのや……?」


ゴーレム出たーーー!!


切り抜けようと再び方向転換をしたら、揉み合いの喧嘩に発展していた虎鉄たちの背後に、ゴーレムが壁のようにぬうっと立っていた。