なんで1年の階に李堵先輩が来たかは知りたくないってことで、ここは誰も巻き込まずに一旦逃げるが吉!
「ミヤテンあとよろしくっ」
「おー……無理かも」
「逃がすわけないだろ」
「だが行かせねえ!」
「待て待てオイきゅうっ」
えっ……。
騒がしさに見向いたら、李堵先輩が不敵な笑みを浮かべ、きゅうちゃんは獲物を見つけたが如く目を光らせ、虎鉄までもが芋づる式に私を追い掛けてくる。
バクに至っては「俺も俺もー」と楽しんでいるし、ミヤテンは「喧嘩すんなって~」とやる気のない仲裁に入る。
好き勝手し放題だな! なんなのこれ! 私が逃げた意味ないんですけど! 止まったほうがいいの!?
「ねえっ、全員とりあえず落ち着いて……っ」
脚に急ブレーキをかけた瞬間、笑顔の李堵先輩が目に入り、その手に持たれたものが温泉旅館の近くにあるテーマパーク優待券だと気付いた。つまり私を1泊2日のデートに誘おうとしているのだと分かった。その間およそ1秒。
「やっぱ李堵先輩キモイ無理ぃいいい!!」
「楓鹿このテーマパーク行きたいって言ってただろ」
「バンビ先輩に近づくんじゃねぇえええ!!」
「きゅう! いい加減にしねえと張っ倒すぞ!」
「じゃあバンビ先輩は俺が守るってことで任せろっ」
「ちょっとバク!? なんで押すの守ってない守ってない人質差し出すみたいになってるヒギャーー!!」
「あはははっ! こういうのなんて言うんだっけ? 三つ巴じゃ人数多いよなー」
「なして深山先輩は止めねえのわ!?」



