「高遠さーん! これ備品の場所とか各クラスの分担場所とか、チェック表その他もろもろ一式!」
予鈴が鳴ったと同時に用箋ばさみを持って駆け寄ってきたのは、腕章をつけている我がクラスの美化委員。
「あとせっかくだし、総指揮官から一言お願いしまっす!」
「えぇ……。あー、じゃあ……掃除をすると心も掃除されるって言うくらいだし、快適な学園生活を送るためにも今日はみんなでオリガクを綺麗にして、すっきりした気持ちで帰りましょう」
「はーい!」「がんばります!」
と声があがったところで、「じゃあ始めよう!」と美化委員の合図でクラスメイトは一斉に動き出す。
こうして携帯に触る暇もないほど、大忙しの月一清掃が始まった。
「楓鹿ー。この真っ黒になった雑巾って捨てていいの?」
「えっと雑巾……は、バケツの中でもいいから洗って1カ所にまとめておいて!」
「バンビー! 窓ふき用の洗剤ほぼ空なんだけど補充ってどこでできるー!?」
「なんでもう空なの! 補充はA組! 詰め替え用は全部A組のロッカーの上!」
ひとつ作業をしているあいだに、あちこちから声を掛けられる。場所を変えれば、抱える仕事が増えていく。
「高遠さ~ん。ごめん、うちの美化委員見当たらなくて。チェックしてもらっていいかな?」
「あ、うん! すぐ行くからちょっと待ってて!」
どたばたと校内を走り回っているあいだに、ほとんどのクラスが机を元の位置に戻し始めていた。



