彼女と同じ高校に行きたいなんて柄じゃないって信じられなかったのに、私が知っている限りの虎鉄を重ねたら、妙に納得してしまった。
だから笑えなかった。おもしろくなかった。
私よりも前に、虎鉄が夢中になった元カノの存在なんて、実際に見たくも知りたくもなかった。
要するに私は今、心の奥底から、思いっきり嫉妬してるんだ。
「……前に、元カノと何があったのか話したいとは思わない、みたいな話をしたけど。バクは会わないように避けてたって、そういうことだよね」
虎鉄は声もなく『はあ?』と言う表情をして、人もまばらなグラウンドに目をやり、首のうしろを掻いた。
「出願したあとに振られたとか、ダセェから話したくなかったんすけど。追い掛けて入学した形が残っただけで、より戻したいと思ってオリガクに来たわけでも、嫌嫌来たわけでもねえ。半年前のことだし、実際あの人がいるってこと、会うまで頭からすっぽ抜けてた」
「……マネージャーやってるって知ってたから、ハンド部の手伝いしに行ったんじゃないの?」
「なして用もなく会いに行かなきゃいけねえのや。グラウンド整備手伝ってたら声掛けられて、久しぶり元気かよとか、その程度の偶然っすよ」
偶然? バクは会いたくなかったみたいだけど、虎鉄が元カノと再会するのを阻止していたわけじゃないんでしょ?
虎鉄も元カノも、会いたくなかったわけじゃないんだから、偶然じゃなくて必然じゃん。だからあんな楽しげに話せるし、当時の想いが再燃しても――…。



