「なーんか超懐かしくね? まっさか、この組み合わせをもう1回見る日が来るとは思わねかったわ」
「バク、も、久しぶりだね。オリガクに入学したのは知ってたけど、なかなか会う機会が……って、トラにも同じこと言ったね」
眉をハの字にして笑う虎鉄の元カノに、バクも声を出して笑った。
「相変わらず鈍感っすね、先輩。会わないよーに避けてたんすよ? 俺だけだったみたいだけどー」
「おいバク……」
「だぁってトラに同じ高校目指させといて、あっさり振りやがるんすもん」
「バク! んな昔のことどうでもいいべやっ」
「だな。半年前のことなんか、どーっでもいいべなあ。だから仲良くダベってられんだろうし? 当時の想いが再燃!なーんてこともありえたりして」
……バクって、場の空気を乱す天才なのかもしれない。
一気に元カノは気まずそうに目を伏せ、虎鉄は今にもブチ切れそうで、熊男は完璧に蚊帳の外。
私は私で、今月いちばんの衝撃を受けていた。
どの高校を目指すかは自由だし、理由だって人それぞれだけど。
この、虎鉄が。明らかに偏差値足りてなさそうな虎鉄が、家から近いからとかじゃなく。彼女と同じ高校に通いたいからって理由でオリガクに入ってきたとか、どんなギャグよ。
「おもしろくない」
笑い飛ばしたいのに、ちっとも笑えない。
「私やることないし、先に着替えて帰るから。おつかれ。また明日ね」
「うーす。おつかれっしたぁ」
呑気なバクに苛立つこともなく背を向けると、「は?」という虎鉄の声がした。



