合わせた両手を顔の横に持っていけば、あら不思議。
ハンドボール部員は一瞬硬直してから、「そこで見ててください!」と声をそろえた。
見たかミス・オリガクの力。
地元情報誌に載っただけでいつもより3割増しよ。
一斉に片付けのスピードを上げた部員にぽかーんとしていたマネジは相好を崩し、くすりと笑った。
「すごい。高遠さんがマネージャーだったら、みんなもっとやる気出すかも」
まるで可憐に咲く花のような笑顔を見せてくれたところ悪いけど、私の精神的に汚れてる感が浮き彫りになっただけですから。何これめっちゃ胸痛い。
「そんなことねえよ! お前がいるだけで心強いって!」
熊男はまだいたの。ていうかマネジに惚れてるんだね、そうなんだね。すごく好きな子がいる男にはミス・オリガクなんてどーでもいいってことをこのタイミングで証明してくれちゃって本当なんてお礼を言えばいいのやら。
「なあトラ! お前もそう思うだろっ!?」
「は? まあ、そうなんじゃないっすか」
ソウナンジャナイッスカ? そうじゃねーんすよ元カノを赤面させちゃうような回答求めてないんすよこっちは。
「俺やっぱ、何考えてんだか分かんない人、苦手だわ」
ぼそりと呟いたバクの声が、エラーを起こしかけていた思考回路にすっと入ってきた。
「……え?」
虎鉄たちとの距離を詰め始めたバクは、顎で行く手を差し、ついて来いと言っているらしかった。
なんか、嫌な予感しかしないんですけど……。



