そこでやっと、見つけたときから虎鉄が動かずにいたのは、マネージャーとの会話を弾ませていたせいだと気付く。
他の部員もしゃべりながら片付けをしているけれど、ふたりは隣合ったまま、笑顔を浮かべている。
「あのマネジ、中学の先輩なんすよねー」
「……へえ。意外」
虎鉄とバクが“先輩”って呼ぶ人には見えないけどな。
ミヤテンのことは先輩と認識していなかったくせに、なんであのマネジは認識しているんだろう。
交流は2個上とのほうが盛んだったと聞いていた私から見ても、繋がりが想像できない。ご近所さんとか?
「オリ中の隠れマドンナ的存在でしたからねー」
合点のいく答えをどうもありがとうございます。
160センチくらいかな。ジャージ姿でも華奢な体躯だと分かる。虎鉄と話す横顔は自然体で、メイクもほとんどしてないと思う。
肩下20センチ程の黒髪は艶があって重たい感じもせず、軽やかに風になびいている。それを耳にかける仕草や、笑うたび口元を手で隠す動作は見るからにしとやかで、マドンナと呼ばれるのも頷けた。
「清楚って言葉が当てはまりそうな人だね」
きれいな人だね、という言葉は無理くり呑み込んだ。
「バンビ先輩はも・ち・ろ・ん、可愛いって言葉が当てはまるんで! 比べる必要ないっすよー?」
「何考えてるか分かんない系女子ってどういう意味?」
「おっほ……迷わず聞き流すバンビ先輩もたまんねーっす」
「何考えてるか分かんない女子って、腹黒いってこと?」



