「俺の理性が飛ぶか飛ばないかは、先輩の言動にかかってるんで。ほんと頼んます」


……人任せってどうなの。自分で制御しないさいよ。


ほんと、この猛獣の思考はどうなってるの。なんでそんなこと言えちゃうの。


信じられなくて、じいっと見つめると、眉を寄せられた。


「だから、はあ……なんでそんな可愛いんすか」


かっとまた頬が熱くなるのを感じ、


「知らないわよ!」


慌てて歩き出す私の顔はきっと真っ赤だ。ついてきた虎鉄のほうはどうだか、見ることさえできないけれど。


「なんでとか訊かれても困るっ!」

「俺が訊いてんのは見た目だけじゃなくて言動が主なんすけど……」


やっぱ無意識かよ。ぽつりと零した虎鉄のそれは、困ったとか、参ったとか、そんな感じの声音だった。


でも聞き流した。ものすごい速さで頭の隅に追いやった。


困ってるのも、参ってるのも、なんでと訊きたいのも私のほうなんだから。


虎鉄の言動で調子が狂う私は、虎鉄に振り回されて余裕がなくなっているって、自覚してしまった。


本当に冗談じゃない。


私ミスオリガクなのに。今月すでに5人の男子にアプローチされたのに。小さく載せてくれるならって約束まで破られて、フェアリー系女子なんて書かれたのに。


そんなのちっとも関係ないくらい。私って恋する気持ちを知っている、ただの女の子なんだ。



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