「防犯ブザーとか、ひっさびさに見た……ふ、マジかよ」
「何かしたら、これ鳴らすから」
「つまり送っていいってことっすね」
虎鉄は私に微笑んでから、バクを見遣った。
「んだよトラ。ドヤ顔してんでねえぞ」
「またフラストレーション溜まったんじゃねえかと確認してやったんだよ」
「おだってられんのも今の内だべな~。ね、ミーア先輩」
「んー? そうだね。楽しみが増えた」
バクとミーアが話し始めたところで、テーブルの上の携帯がメールを受信した。
≪何かされてもいいって思ってるくせに≫
「~っんな……!」
思わず声を出せば、「なしたの?」と差出人であるミーアは白々しい態度をとる。
「なんでもない!」
私は赤くなった顔を背け、携帯をスクバに押し込む。
ありえない。そんなこと、思ってるわけないじゃん。
虎鉄に何かされてもいいなんて、これっぽっちも思ってない! 顔が熱いのは不意をつかれただけで、図星なわけじゃなくて……。
「そういや先輩、」
「へっ!?」
「服見なくていいんすか? 見るなら付き合いますけど」
言いながらゴミを集めたトレーを片付ける虎鉄に、曖昧な返事しかできない。
服は見たいけど、彼氏でもないのに後輩の虎鉄を付き合わせるって……いやでも、帰りは送ってもらうんだし特に気にするようなことじゃ、ないような。
「うち服はいいや~。バクもいいでしょ?」
もんもんとしていると、ミーアが会話の先導権をさらう。