胸に手を当て語り始めたバクから、隣の虎鉄をじろりと見つめる。
「……俺じゃなくて兄貴が貸したんすよ」
「何も訊いてないけど」
「じゃあなんで睨むんすか」
「睨んでない」
そう言ったところで2階に降り立ち、ミーアが振り向いた。
「うちアクセ見てくるけど、どうする?」
「俺は腹減ったんで軽くメシ食います」
「そ。じゃ、あとでね」
いやちょっとなんで私と虎鉄がセットなのよ。流れ的にそうでしょうけども! ぱぱっと決め過ぎじゃない!?
意見を言う間もなく、ミーアはバクを連れてアクセサリーショップに向かってしまった。
「先輩もなんか食う? 飲む?」
「……フルフルがいい」
「知らないっすけどあっち行けばあります?」
虎鉄はフードコートを指差したので、あると返事をすれば歩き始めた。
「フルフルってなんすか」
「フル・フルーツっていう、飲む果実の店だよ。注文してから目の前でミキサーにかけてジュースにしてくれるの」
「ああ……ふっ、まさに好きそう」
何がおかしかったのかは知らないけれど、笑われても嫌な気持ちにはならなかった。
フードコートの4人席で向かい合い、虎鉄はモスのなんとかセットを食べ、私は苺のフレッシュジュースを飲みながら、色んな話をした。
虎鉄は父子家庭で、5つ上の元ヤン兄貴がいるとか。私は3つ上のお姉ちゃんとひとつ下の妹がいて、三姉妹だとか。中学時代の虎鉄はちょっとだけバレー部に所属していただとか。



