ジャージに着替えなくていい放課後なんて、すごく久々な気がする。裾から手がちょっとしか出ないジャージ姿の私も可愛いけど、やっぱり制服よね。
白いカーディガン以外は全て指定のもの。亜麻色の襟とスカートにピンクのリボン。ワンポイント刺繍が入った紺色のハイソックス。安っぽく見えない合成皮革のスクバ。
中2の頃からこれらを身に着けると決めていた。
家からも近いオリガクはお姉ちゃんの母校でもあるし、他にも理由はあったけど、制服が好みだった上に豊富で迷わず第一希望にしたんだ。
女子高生なんだから、制服は戦闘服みたいなものよ。
べつに、いざ出陣!みたいな気持ちでここに来たわけじゃないけど。
オリガクより更に高台にある、徒歩20分で着く3階建てのショッピングモールは略してオリオンと呼ばれ、フードコートや映画館も併設されているため、夕方はオリガク生率が格段にアップする。
「休日ならまだしも映画は時間食うから嫌っすよねぇ」
「うちアクセ見たいな~」
オートスロープで2階へ向かいながら、ミーアとバクのうしろにつく。隣では虎鉄があくびを零している。まさにトラって感じ。
「眠いの?」
「腹のほうが減ってるっす」
じゃあカフェに行くのが妥当だと思うけど、前ふたりがカフェにそぐわない会話をしているからどうしたものか。
「昭和のロマンポルノは芸術だと思うんすよ」
「高1にしてどんな趣味なの」
「始まりはトラが貸してくれた1本のマル秘ビデオでした」



