中指斬残、捌断ち儀



「ほんと、最悪だわ、てめえらは。開口一番にそれかよ」


やってらんねえと撫で肩となった藤馬さんは、いつもの彼に見えた。


先ほどの異彩もなく、違和感なく見ることができた藤馬さんが僕に近づいてきた。


「あの……」


傷は大丈夫ですかと聞く前に、腹部に重い一撃をくらった。


そういえば、あの悪夢に行く前に踏みつけられまくったなと久方ぶりと感じられる鈍痛が胃まで下る。


五十鈴さんが横で藤馬さんに何か叫んでいたようだが、耳が捉えたのは僕自身の嗚咽。


食道を膨らませる異物が逆流し、大口をあけて戻してしまうのは致し方がないにしても。


「なっ……げほげほっ」


参道上の吐瀉物は“二本”。胃液と唾液をまとった中指が、鎮座していた。