実際、忙しい“役職”の合間に僕の様子を見に来てくれているようだし。
五十鈴さんは気にするなと言っても、ある程度の分別がつけられるとそういうわけにもいかなくなる。
大切な人ほど、本音（わがまま）を言えなくなってきた。
その人に無理をさせてしまうのではないかと、遠慮がちになってきたわけだけど。
そんな時だった。
五十鈴さん以外の、僕の人生のターニングポイントというか、どう見積もっても悪い方にしか進まない出会いがあったのは。
遠慮も配慮もいらない、軽口も悪口を言っても気にしない。僕に殺意と憎悪と享楽を抱くような小悪党が、僕の前に現れた。
