(一)


月見は、いつでも出来る。


水分を多く含んだ梅雨の空気を通してみる月は、愁いを帯びているようで眩く見えた。


水の中から見上げた光。夜の水面を震わせているような。


梅雨の月も馬鹿にはできないと実感できた今、その誤りを訂正し、新たに知ったことに祝賀をあげるように、僕は特等席からその月を眺めていた。


地上から少し高い、山の中腹。春夏秋冬家の門扉前。神に参拝(祈る)べき場所に腰かける。


春夏秋冬の神社に神はいない。だからこそ、僕が見るのは後ろ(この建物)ではなく前(月)。


何に祈るわけでもないけど、少し目をやれば見つけてしまった神秘(月)に心を持っていかれつつあった。