雪が降る町~追憶のletter~

晶が席に座ってすぐ横の吊革に腕を余しながら掴まる快斗。
そんな快斗の姿を下から仰ぎ見るのは初めてで、やっと落ち着きかけた心臓がまた早い鼓動を刻み始める。

(なんか、やっぱりときどき快斗じゃないみたい)

そんな晶の視線を感じ取ったのか、ふと快斗も晶を見下ろした。


「····なんだよ?」


ばっちりと目が合ってしまって言い逃れが出来ない。
晶はさりげなく窓の外に視線を移すと、頭の中をフル回転させて話題を探す。

しかし、心音は高鳴ったまま。
快斗の刺さるような視線も浴びたままの晶にはまともな考えが出る筈もなく···


「きょ、今日、ほんと偶然だったね!」


なぜだかわからない、もやもやする筈の話題を自ら投げかけてしまう。
言うまでもなく、言い終わる頃には既に自己嫌悪だ。