雪が降る町~追憶のletter~

バスに乗ると、パラパラとお客が乗車していて2人掛けの座席は空いていなかった。

もとより晶はすすんで席を譲る方なので立つことは苦痛ではない。


「あ、晶そこ」


吊革に手を添えようとした時に一人掛けの席が空いていることに気が付いた快斗が晶にそこに座るよう促した。

断る理由もなかったが、急に女性扱いをされている気がしてその席にすぐに掛けるのを躊躇った。

するとバスがおもむろに発車した衝撃で、どこにも掴まっていなかった晶はよろけてしまう。


「・・・!!」

「・・ほら、早く座っとけって」


そんな晶を自然と支えて腰に手を回してくる。晶は快斗に今まで感じたことのない動悸を、ひとり胸に手を充てて落ち着くように心で何度も唱えた。