雪が降る町~追憶のletter~



―――それから数年後。

雪が降る街に俺はいた。
そしてちょうどその季節に差し掛かる時ーーー




「…快斗!?」
「あっ…晶ぁ!??」


俺は容易く運命を信じそうになる。

まさか、家の前じゃなくてこんな小さな居酒屋で再会するなんて。
不意打ちの再会に、一瞬頭が真っ白にはなったけど。

けど―――


「貸して」


変わらない晶に、少し綺麗になった晶に。俺はそう言って晶の携帯を受け取り、再び連絡先を手に入れた。

俺の引っ越しの荷物に入っている黒い箱。
あれを手にした日から、二度と同じ過ちはしないと誓った。

だから、またこの雪の降る町に足あとをつける日が来た時は―――…

その時が来た“今”、俺は晶の手を迷わずに取る。



「昔から、変わんねぇな。これだから放っておけない」



10年前、伸ばし損ねた手を、10年後の今、重ねる。



「つめてぇ…人間カイロであったまろうと思ったのに」



だけど、照れ臭くて余計なひと言は、勝手に口から出てくる。

それでも、この一歩が。
この手の温もりが。

近い将来、俺の積もった想いを、あの雪に乗せて―――。


絶対伝えるんだ。






*おわり*