雪が降る町~追憶のletter~


「雪…止まないね」


学校を出て歩きだすなり晶がぽつりとつぶやいた。
俺はポケットに手を入れ、黒いコートのフードを被って空を仰ぐ。


「こういう雪、結構好きだけど、俺」
「……なんかあったの?」


俺の言葉を聞いた後、晶が俺を見上げて不意にそう聞いてきた。

気付けば中学入学した頃は同じくらいだった身長も、今では俺の方が10センチ近く高い。

俺は空から晶へと視線を移した。

睫毛に雪が乗っかってる。
でもさすがに睫毛なんて触れないから、俺は晶の頭に薄ら積もった雪をコートの袖口でぼふぼふとほろった。


「きゃっ…」
「帽子つきのコートにしたら?」


晶は俺の不意打ちな行動に慌てながらも、自分の投げかけた質問に答えてくれないから、と少し頬を膨らませてマフラーで口元を隠した。

俺はそんな晶を見て、ふっと笑った。


「…別に何もないんだけどさ。なんとなく、この雪見てたら晶と帰りたくなった」
「それ…どういう…」
「なんか、ガキの頃思い出したりして」
「ふーん…」


それは半分口実、半分本当。
本当に、こんな雪の降る町の中を、晶と改めて歩いてみたいと思ったから。

暫く、叶わなくなりそうだから―――。