「…違うの?」
「……」
こいつは何が聞きたいんだろう。
いや、本当はなんとなくわかる。
こいつ―――晶が好きなんだ。
「…さぁ?“晶”に直接聞いたら」
俺は敢えて“晶”と言って答えを濁してやった。
―――相当性格悪いな、俺。
だけど、んな素直に敵を喜ばせるようなこと言えるほど大人じゃない。
「ち…晶どこ行ったんだよ」
俺は独り言を言いながら廊下を歩いていた。
あの嫌な感覚を思い出した。
卒業式の時の、あの落ち着かない感じを―――。
その気持ちはなかなか切り替わらなくて、やけに早く晶を見つけたくて足早に廊下を歩いた。
丁度つきあたり手前で角を曲がると、そこにある階段の死角に晶を見つけた。
「あき―――」
声を掛けようとしたときに、男子生徒の後ろ姿も視界に飛び込んできたから言葉を飲んだ。



