もうすぐクリスマスだ。

家も町もイルミネーションを飾ったりで、毎日同じ道を歩いている筈なのになんだか浮足立ってしまう。

今日も気温は氷点下。

ギュッギュッと雪を踏む音があの日の自分を思い出させる。


「バス、遅れるんだよなぁ···」


ほぅっと白い息を両手に吐いて、一瞬の温もりを感じる。

白い息はふわりと頭上へ消えていく。

マフラーを鼻まで隠して肩を上げて手をポケットにしまい込む。



「おす」


いつもの低音が耳を掠めると、一瞬の温もりじゃなくて、ずっと温かいものに手を包まれる。


今日もバスを待つこの時間は、寒さなんて忘れてしまうくらいに早く感じる。

なんだかんだで、私は冬が、心地いいらしい。






*おわり*