少女十四歳。




少女は女学校に進学した。

長くなった髪は、綺麗に結い上げて、少し伸びた身長は、新しい赤の着物袴に包んだ。

少女はまだ成長途中、






女学校の校門まで、一本長く続く道、銀杏並木のその道は、この秋も綺麗に黄色く染まった。



やっと慣れたわたしの学び舎。

門を出てすぐはじめの一本の、銀杏の横に、わたしは立っていた。


帰って行く生徒を見送り、銀杏並木の遠くを見ては、俯いて。


俯いていると、目の前に影が出来上がった。


「小春ちゃん」


見上げれば、待っていたその人。

息を切らして、目を狐さんみたいに細めて、すごく申し訳なさそうにしていらした。



「馨さん」



彼は、春近さんの同級生の、小野馨さん。

わたしは馨さんを見上げて、控えめに微笑んだ。



馨さんがわたしを送り迎えしてくださるようになったのは、

春近さんが江田島に行ってからだった。


わたしはもうすっかり馨さんと話せた。



「ごめんね今日は少し講義が長引いちゃって」

「大丈夫です、全然。走っていらしたんですか?」

「う、うん。早く小春ちゃんに会いたかったんだよー」


銀杏並木の片隅で、話す二人はいつまでたっても少しよそよそしい。
馨さんは、明るく振舞ってくれる、けれどわたしは、だめで。

だからよそよそしいのは、わたしのせいで、


けれど馨さんはいつもわたしを迎えに来てくれた。



とても身長の高い、馨さん。


わたしは馨さんを見上げ、眉を下げた。


走ってまで来て下さって、わたしは、お礼も出来ずにいたから。



「心配してくれてるの?嬉しいな」



ニッと馨さんは頬を緩めた。
なのでわたしも、頬を、少し緩めた。