ある春のことです。 工房の扉を少し開けて、お客がやってきました。 白い猫でした。 メスの猫です。 彼女は挨拶もせずに工房に上がり込むと、小さい足で歩きます。 彼女の歩みに合わせて、床に転がっていた鈴が笑います。 工房はたちまち賑やかになりました。 けれど、青年には鈴の音が聞こえませんでした。