「桐さ――」 「わ、わかった。じゃあ今日の練習で教えてほしいとことかあったら、見といて」 「あ、はい」 桐さんは早口に言って、恋理だけに手を振って行ってしまった。 隙間から見えた耳がちょっと紅くて……風邪とか、大丈夫かな? と思ったら、ピタッと足を止めて振り向いた。 眉をキリリとあげて、視線は鋭い。 「彼方さん、こんなところで私が弱点見せるとお思いなさるなよ」 「思わねえけど言葉遣いが現代じゃねえよ」 「彼方さん自身、時代錯誤な感じじゃないですか。それでは」