「うん?」 「いい、よ……それで……」 「桐さんで、いいの?」 「私も氷室くん、て呼んでるし……似たり寄ったりかな、って」 「じゃあ桐さん」 「……何かな、氷室くん」 桐さんは少しだけ腕を解放して顔を見させてくれた。 「もう行かないと遅刻扱いになる」 と、腕時計を見せる。 針が示す時間は猶予を許さなかった。