「……晃くん? 何が……?」 「私のことを、見てほしいと思う相手が」 するっと、それまで俺が握っていた桐華ちゃんの腕が逃げた。 束縛する俺の力がなくなったからか……無理に逃げられたわけではないので、緩んだ隙を突かれたみたいだ。 桐さんはくるりと俺に向き直った。 出逢った頃より少しだけ、伸びた髪が合わせて揺れる。 「今まで、全部晃くんのためだったんだ」 懺悔のように顔を歪めて、桐さんは話し出した。