「桐ちゃんおかえりー」 母と暮らすアパートに帰ると、なんと玄関前で出迎えてくれたのは識輝ちゃんだった。 「えっ、どうしたの識輝ちゃんっ」 「おつかい頼まれたから、ついでに桐ちゃんの顔見てから帰ろっかなって」 「ありがとー」 さっきまで落ち込んでいた気持ちが、一瞬だけ晴れた気がした。 「唯(ゆい)ちゃん、今日も遅いの?」 「うん。残業するって連絡あった」 唯ちゃん、とは私の母で、識輝ちゃんにとっては叔母になる。