「え……? どうした?」 氷室くんはふつりと俯いてしまった。 「説明丸投げにして、夏香ちゃんに悪かったと思ってる。でも、……俺と彼方は――俺は、恋理を赦せないでいるから。……落ち着いて説明も、出来なかったと思うから」 声は弱弱しい。 私は氷室くんに距離を近づけた。 「ゆるせないって、何を?」 手を伸ばせば前髪に触れる。 表情を見ることも出来る距離。 氷室くんは更に俯いた。 「……逃げた恋理を、ゆるせないでいる」