「ひむ」
 


桐さんを見送って手を振っている恋理の隙をついて、彼方が下駄箱を盗み見ていた。



「ない」
 


続く彼方は不思議そうな顔で教えてくれた。



俺も声をひそめる。



「ない? だって、もう来てるだろ?」




「ああ。でも、今日はない。おかしいな……サイクルでいくと今日はある日なんだけど」



「彼方? どうしたのしかめっ面。ひむもいいの? 愛しの桐を見送らなくて」
 


恋理に気づかれた。