「どうしたんですか、いきなり」
素っ気なく聞くと、
「別に、したかっただけ」
と背中を向けたまま同じく素っ気ない返事が返ってくる。
キスしたくなったなんて、
「私のこと、好きなんですか?」
なんて、思ってしまうんですけど。
冗談めかしてたずねてみる。
すると、答えはわりと真面目に返ってきた。
「好きだよ」
それを聞いた私は固まってしまった。
どうせはぐらかされると思っていた。
どうだかな、とか、さあな、とか、別に、とか。
「どうした?」
振り返った恵一が黙ってしまった私を怪訝の表情で見下ろす。
「男の人にそんなこと言われたの、生まれて初めてだから……ビックリしちゃって」
恥ずかしくて、笑ってごまかしてしまいたい。
だけどここで笑ってしまうと、好きだという言葉まで冗談にされてしまいそうだ。
真剣に好きなのか、それともなんとなく好きなのかわからないし、私を騙すための嘘かもしれないけど、嬉しい。



