「羨ましいです」
嫌味だが、そう聞こえない声色で言うと、恵一は息を漏らしながら
「そうでもないさ」
と呟いた。
勝者の謙遜?
裕福に育って、貢いでくれる女もいたのに。
悔しさで息が苦しくなった。
だから私は聞こえていないふりをして、わざと音を立てながら床を掃いた。
なぜ母が裕福なあなたに金を送らなきゃいけなかったの?
怒りが私の心を黒く塗り潰して行く。
しかし、だからといって感情のままに行動していては、当初の目的を果たせない。
ありったけの表情筋に力を込めて、笑む。
「いつか、ご両親にもお会いしてみたいです」
親の顔が見てみたいという意味で。
恵一は曖昧な笑みを浮かべ、うんともいやとも取れる、適当な返事をした。
「ああ」



