それを聞いて、無意識に一瞬ほうきを動かす手を止めてしまった。
裕福な家庭に育った?
だったらなぜ、母から金をもらっていたの?
裕福だったのなら、私の親にではなく、自分の親を頼れば良かったじゃない。
裕福なくせに貧しい者から騙し取るなんて、ますます許せない。
恵一の育ちの良さを感じたのは、彼の部屋で初めて朝を迎えたときだった。
どう表現して良いのか難しいところだが、部屋に置いてある家具の配置やチョイスに、貧乏のにおいがしなかった。
余裕や余白を楽しもうとする姿勢とでも表現しておこうか。
比較的貧しい我が家は狭い空間にぎっしり物を置きたがる。
しかし恵一の部屋には無駄なものがほとんどない。
そこに余裕と余白が見て取れた。



