閉店後、恵一と二人で作業をしていたときのこと。
「お前、何かあった?」
ぶっきらぼうにそう尋ねられた。
「え? 何もありませんけど」
通帳に名前がなかったこと以外、特に気になることもない。
「匠が言ってたぞ。今日は様子が変だって」
「匠先輩の気のせいですよ」
「それなら良いんだけど。俺のせいかと思った」
心配してるんだったら、もう少し感情のこもった言い方ができないものか。
どうしてこうもぶっきらぼうなんだろう。
「いつものマダム集団を見て、楽しそうだなーってうらやましくなっただけですよ」
「ああ、あのマダム集団な」
この店にとっては、よいお客様である。
恵一は少し笑って窓の結露を拭う。
「ところで、マスター」
「ん?」



