バイク、乗れないのか。
これだから雪は嫌い。
仕方がない。
今日はバスを使って帰ろう。
そう思っていたら、恵一が言葉を続けた。
「だから、お前さ」
「はい」
「雪が溶けるまでここにいろ」
「え?」
「雪道でスッ転ばれると困る」
恵一はスープを飲みながらサラッと言った。
自分から仕向けたことなのに、彼女扱いされると戸惑ってしまう。
優しくできないとか言ってたけれど、嘘だ。
もっと冷たくしてよ。
嫌な彼氏になってよ。
悪い男である方が、私にとっては都合がいい。
「私、着替えとか持ってきてません」
「あー、そうか」
「大丈夫ですよ、雪が溶けるまで原チャリには乗りませんから」
「そうか。帰れるのか?」
「バスで帰れます」
その少し残念そうな顔が心をくすぐる。
やめてほしい。
「そうか」
恵一が作ったカボチャのスープが恐ろしく美味しい。
昨日の余り物だろうが、今日の朝食も金を払わないと食べられないプロの味だ。



