仇恋アベンジャー


「顔を、上げてください」

滲んだ視界をクリアにしてから、ゆっくりと体を起こす。

「足も崩して。怪我に障るよ」

父親は複雑な顔つきで、母親は涙をこらえているようだった。

「君は本当に、お母さん思いなんだね」

「いいえ。私はただの甘ったれです」

「はは、そうか。亡くなったのは本当に残念だったね」

そのショックが全ての原動力だった。

「はい。産みの母が別にいることも知りましたけど……私にとっては、松井紀子が唯一無二の母であると、思っています。血の繋がりなんて、関係ありません」

また涙が出てきて、言葉を紡ぎながら声が震えた。

もらい泣きしてしまったのか、母親がポロリと零れた涙を指で拭った。

「それは我々も同じさ。恵一は僕たちの、唯一無二の息子だからね」

恵一は照れ臭そうに窓の方に目を向けた。

もしかしたら彼の目は今、ほんの少しだけ潤んでいるのかもしれない。